一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
それなら、と白羽の矢が立ったのが推進課だ。

希望部署でないところに所属させることで反骨心を煽り、希望部署に入れるよう、更なる案を出してくることを期待。

と同時に推進課というバックアップの部署に所属させることで時にエンジニアとして働くことを許し、必要なときに実力を借りることが出来る。

会社にとって都合のいい話でまとまった。

きっと頭のいい菅原くんのことだからその思惑には気付いていると思う。

それでも菅原くんは辞めずにいる。

本心は分からないけど、辞めずにきちんと推進課の仕事に向き合っているのだ。

私も負けてはいられない。

菅原くんを見習って事前にちゃんと考えるようにした。

特に今回は自分なりに納得した上で里香を誘った。

「里香に必要なのは社内で恋人を見つけることだと思うの」

分かりきったことだけど、特定の恋人を作らないから敵視されたり、好意を寄せられるのだ。

ただこれまで色んなタイプの人を断ってきている分、相手は普通の人ではダメ。

今後も仕事を続けていきたいと考えているなら『あのひとを選んだなら諦めよう、仕方ない』そう思わせられるだけの人物でないと結局、里香に対する悪口は消えない。

その点、耀はピッタリだ。

耀は中村家の人間だから玉の輿狙いかと言われるかもしれないけど、全てを兼ね備えている優ではなく暗い印象を与える耀を選ぶことでああいうタイプが好みだったのかと思わせられる。

現に耀みたいなタイプは今まで一度も紹介していない。

と言うより、里香との縁談を望む男性は美人の里香と並んでも引け目を取らないと自身で分かっている、容姿に自信のある人ばかりだった。

自信家を里香は好まないのに。


「だから佐々木さんを選んだんだ?」


菅原くんの間の手にひとつ頷いて続ける。


「里香から好きな人の話を聞いたことないし、上手くいけば上手くいくと思うの」

「ふーん。一応、ちゃんと考えてたんだね」

「一応ね」


すべて私の頭の中での考えだから不安はある。
でもやってみなきゃ分からない。


「よし」


気合いを入れて、参加者が集まっている会場へと向かう。
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