One more kiss
「しかもどうやらあなた限定で。だからもう、自分でもびっくり」


すると彼は、再度身を屈め、私の瞳を覗き込みながら問い掛けて来た。


「もう一回、試してみても良い?」


無邪気な微笑みを、とても妖艶なものに変えて。


「嫌です」


自分でも驚くくらい、私はきっぱりと拒絶した。


でもそれは行為そのものに対してではなくて。


「お試しじゃ、イヤ」


覚悟や心意気の部分についてだったのだ。


「来るなら男として、本気で来て下さい。それができないならお断りです」

「あらまぁ」


一瞬目を見開いたあと、マコトさんは今まで私には見せなかった表情を作り、聞かせなかった声音で囁いた。


「ホント、予想外の女だね…」


途端に私の全身は、電流でも通したように強く甘く痺れる。


私はどうやら大いなる勘違いをしていたようだ。


彼への恋心を必死に沈静化させようとしていたつもりだったけれど、むしろ、密かにじっくり丁寧に、育ててしまっていたらしい。


そしてもしかしたら、これからまた更に、甲斐甲斐しく世話を焼いて行く事になるのかもしれない。


問題は山積みだけど。


他に考えなくてはいけない事、決断しなければならない事は多々あるのだけれど。


だけど今はまず、彼の気持ちを確認する事が最重要任務だから。


再び近付くその唇を、こちらも本気で受け止める為に。


私は静かに瞼を閉じた。
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