恋より先に愛を知る
「え・・・おい、どーした?」
ドキドキと、心臓が高鳴る。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
「あかね、大丈夫か?」
【私に触らないで】
呼吸を落ち着かせて、
私はそう書いた紙を洋ちゃんに見せた。
「え?」
【私に構わないで。前の私じゃないから】
「は?なんだよそれ。ちょっと、おい、あかね!」
駅まで早歩きで歩く後ろを、
洋ちゃんが慌てたようについてくる。
どうした、なんてもう聞かないでよ。
誰にも話すつもりはないんだから。
もう、疲れたんだから。
「あれ?その男誰?」
私はとことん運の悪い女ね。
後ろから追いかけてくる同級生から逃げるようにここへ来たのに、
着いた先にいたのは洋ちゃんよりも更にしつこい、
あの時の男子高校生だった。
男は後ろにいる洋ちゃんを指さして私を見た。
振り返ると、洋ちゃんもその男を見て驚いた顔をしている。
「え、あかねの彼氏・・・とか?」
洋ちゃんってアホなのかしら。
そんなわけないでしょう。
私が必死で首を振ると、
男が私の肩を抱いてにまっと笑った。
「彼氏。いいねぇ、その響き」
【ちょっと!何言ってんのよあんた!】
「だめ?ちょっとアリだと思ったんだけど」
【絶対ナイから】
「お前、誰だよ・・・」
私と男の会話を遮るように、
洋ちゃんが男を警戒しながらそう訊ねた。
そう、そうよ。
私も気になってた。こいつ、誰なのよ。
洋ちゃんに聞かれた男は
機嫌よさそうにふっと笑うと、私と向かい合った。
「俺はね、K校の3年バスケ部。
クオン カイト。よろしく、あかねちゃん」