恋色シンフォニー
「こちらこそ、ごめんなさい。言っておけばよかったんですけど。
でも大丈夫。こんな時は、慌てず騒がず、乾くまで待ちます。そして、麺棒に乳液かクリームをつけます。これで、くるっとすると……、ほら、とれました。
後はファンデのついたパフで軽くカバーすれば大丈夫。
もし外出先で麺棒や乳液がなかったら、リップクリームを直接塗って、ティッシュで優しく拭き取るという方法もありますよ」
「ほえー、実は、こんな失敗するのが怖くて、なかなかマスカラできなかったんです」
「じゃあこれからは、よかったら是非チャレンジしてみてくださいね。マスカラをつけると、瞳も輝いて見えますでしょう?」
「……はい。不思議ですね」

次は口紅。
「ぬるぬるするのが苦手で……」
というので、塗った後、ティッシュで押さえる。

仕上げはチーク。
「ブラシにとったら、いったん手の甲やティッシュに乗せて、粉のつけすぎを防ぎます。はい、にっこり笑ってください」
戸惑いながらも、にっこりしてくれる望月さん。素直ないい子だ。
「このときにぷくっとふくれるこのあたりに最初にのせます。色が一番濃くつきますから。それからふんわり、くるくるとブラシでぼかします。つけてるのかつけてないのかわからないくらいにすれば、派手さはなくても、顔が明るくなります」

うん。かわいくなった。自画自賛。
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