恋色シンフォニー

晩御飯は、カレーとサラダ。
失敗しないメニューで保守的に。

「いただきますの前に、はい。どうぞ」

机の上に置かれた定演のチラシと、『御招待』の赤いハンコが押されたチケット。

「わ、ありがとう」

チラシには、しっかり
“ヴァイオリン独奏 三神圭太郎”
とある。

すごいなぁ。いよいよなんだ。

「龍之介とおいで」
「へ?」
「たぶん、綾乃も緊張するだろうから、あいつに面倒みてもらうようお願いしておく」
「……なんだか急に余裕じゃない?」
「だって、綾乃、僕にベタ惚れだってわかったから」
「はっ⁉︎」
「じゃ、いただきます」
「……どうぞ」
釈然としないな。
そんなにベタ惚れな感じ、出してたかな?

「うん。おいしい。ありがと」
三神くんが一口食べてにっこり笑ってくれたので、ほっとする。
自分の作ったものを人に食べてもらうのは、緊張するものね。

< 166 / 227 >

この作品をシェア

pagetop