恋色シンフォニー
「でも、下手だったら怒るかも」
私が軽くにらむと、三神くんは肩をすくめる。
「そこはアマチュアだから大目にみて。チケット代くらいの演奏にはなると思うけど」
前売り700円、当日800円か。

「アマオケは聴きに行ったりするの?」
三神くんがきいてくる。
「しばらく行ってないな」
「プロオケばかり?」
「いや、コンサート自体、しばらく行ってない」
平日は仕事、彼氏がいた頃の休日は家事とデート。
彼氏にもクラシックが好きなこと言ってなかったからなぁ。趣味を隠すような付き合いが続くわけない、と今になって思う。

三神くんはタンブラーを持って席を立った。
「じゃあ、ぜひ、楽しんできてください」
「ありがと。期待しすぎず、期待してる」

久々の生オケ。
演奏会は一ヶ月後。
うん、久々のワクワク感だ。

……って、ちょっと待った。
三神くんって、話せば普通に話せるじゃない。

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