恋色シンフォニー
動揺したまま、プログラムをめくると、次回定期演奏会のお知らせに、またも息をのんだ。

---------------------------

メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲

シューベルト 交響曲第8番 「ザ・グレート」

指揮 早瀬マリ

ヴァイオリン独奏 三神圭太郎

---------------------------

三神くんがソリストで、メンコン弾くの⁉︎
(メンデルスゾーンのコンチェルト、略して“メンコン”)

どんだけ上手いのよ、三神くん‼︎
そりゃ、シェヘラザード弾けるわ!


「こちら、よろしいですか?」
隣の席が空いていたので、男性から声をかけられた。
はっとしてプログラムから顔を上げると、客席はかなり埋まっており、空席はまばら。
別に荷物を置いておいたわけではないのに、一声かけてくれるなんて、紳士だな。

「どうぞ」
よそ行きの笑顔で答え、その男性に顔を向けると、人目をひくオーラを持ったイケメンだった。

30代。長身。逆三角形の体型。
ゆるいパーマがかかった茶色い髪。
大きな瞳。濃いめの眉。
整い過ぎていない顔のパーツと配置が、逆に野生的というか、色っぽいというか、不思議な魅力をたたえている。
鮮やかな青色のジャケットが印象的。

「ありがとう。失礼します」
男性は、低い、いい声でお礼を言い、席に座った。

男性が座ると、席が狭くて窮屈そうだ。
特に、脚。ながっ。

男性が座るとき、かすかに甘い香りがしたけど、座って空気が動かなくなると気にならなくなったので、安心した。曲の間中ずっと甘い香りがするのは、ちょっといただけないので。
香水の付け方まで紳士だ。

< 19 / 227 >

この作品をシェア

pagetop