婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

目を覚ますと、私は病院のベッドに寝かされていた。
ベッドの脇では、私の手をしっかりと握ったまま圭司が眠っていた。

そっか…
私、お腹痛くなって、圭司に救急車を呼んでもらったんだっけ…

病室の窓からは光が差し込んで、すっかり夜も明けていた。

私が体の向きを変えようと動いた瞬間、圭司はビクッとなって目を覚ました。

「ごめんね 起こしちゃたね…」

「あ 俺 寝てたか…ごめんな なつ どっか痛むとこあるか?」 

圭司はそう言って、私の頬に手を伸ばした。

「ううん 大丈夫… それより 私って 昨日 どうなったんだっけ…」

お腹の激痛も違和感も、嘘のようになくなっている。

「うん やっぱり なつは、卵巣過剰刺激症候群っていう薬の副作用を起こしてたんだよ 腹水が溜まって、卵巣も少し腫れてたらしくて
もう少しで重症化するところだったって言われたよ…」

「そっか 水が溜まってたんだ…」

「昨日、水抜いてもらった後、なつ一度起きて俺と話したの覚えてる?」

「えっ そうなの? 全然覚えてないな…」

「そっか… だよな あのさ なつ …とりあえず、今回は、安静にしてれば、卵巣の方もすぐ良くなるし、不妊治療をこのまま続けることも可能だとは言われたけど…」

圭司は言いにくそうに、そこで言葉を止めた。

「うん 大丈夫 分かってる… 不妊治療はおしまいにするって約束だったもんね…」

無理して笑った私の顔を、圭司は辛そうな目で見つめた。

私のような多嚢胞性卵巣症候群の患者は、もともと副作用を起こす確率が高いのだそうだ。
もし 副作用が重症化した場合、肝機能障害や呼吸不全などを引き起こす危険性もあると言われ… 圭司は始め、不妊治療に反対していた。

それでも、私がどうしても諦めきれなくて、圭司との約束を守ることを条件に不妊治療を許してもらったのだ。

『例え軽度のものでも、副作用が起きたら不妊治療は、即、中止すること』

だから、もう 赤ちゃんは、諦めなければならない…。

「ごめんね 圭司… やっぱり 私は、圭司をパパにしてあげられなかったね…」

今は何より、そのことが心残りだった…。
賑やかな家庭に憧れると言っていた圭司の言葉を思い出すと、切なくなる…。













< 104 / 140 >

この作品をシェア

pagetop