婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
記憶喪失~圭司side~

「ごめんな…。」

俺はなつの寝顔を見つめながらそう呟いた…。
キングサイズのベッドだというのに、なつは隅の方で体を縮めて、背を向けながら眠っている。

なつは、ケガをしている俺に気を使ってくれてるのだけれど、きっと 今のままじゃ ケガが治った所で、この距離は縮まらないだろう。

なつは、それくらい 俺に遠慮している。
そうさせているのは俺だけれど…。

俺は、事故で10年間の記憶を失ってしまった。
そして その間に出会って結婚したなつのことを、俺は全く覚えていない。
代わりに俺の記憶に残っているのは、なつによく似た10年前の恋人…芹香だった。

病院のベッドで目が覚めたとき、一番最初に目に入ったのは、なつだった。
一瞬 芹香かと思ったけれど、すぐに別人だと気づいた。

あの日、そこにいた全員が俺の名を呼んでいたけれど、浩太以外は全く知らない顔だった。

『ほら おまえの奥さん!』

そう言って、浩太がなつを紹介した時は、正直悪い夢でも見ているのかと思った。

芹香は今、どうしているのだろうか…。
何よりも、それだけが気がかりだった。

浩太と二人きりになって、ようやく 自分の身に何が起こったのかを理解した。

自分が記憶喪失なのだと…。

俺の記憶は、芹香を空港で送り出したところで途絶えている…。
あれから、10年もの月日が経ち、芹香によく似たなつと結婚したという事実を、どうしても俺は受け入れられなかった…。



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