婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
すれ違う二人

マンションにつくと、玄関に男物の靴が置いてあった。

あっ 誰か来てるのかな?
様子を伺うように、そっと廊下を歩いているとリビングから浩太さんの声が聞こえてきた。

二人は話に夢中になっているようで、私の気配には気づいていないようだった。

「なあ 圭司 話 変わるけどさ…おまえ なっちゃんとはうまくやっていけてんの?」

ドアの前まできて、浩太さんがそんなことを言い出すものだから、ついつい 耳を傾けてしまう…。

「うーん そうだな…努力はしてるけど、なかなか 思うようにはいかないな…。」

圭司の言葉に胸がチクッと痛んだ。
やっぱり 圭司も私とは上手くいってないと感じているのか…。
そりゃ そうだよね …
好きでもない相手と暮らしてるんだもん…。

「あれか? まだ 芹香のことが気になってんのか? ちゃんと諦めろよ…今はなっちゃんのことだけ考えろ。」

「それは分かってるよ… っていうか、芹香って今さ こっちに帰ってきてないか? 浩太 何にも聞いてない?」

「帰ってきてないって。もう だから おまえはそんなことより、早く忘れた記憶を思い出せよ~」

やっぱり 圭司は芹香さんのことが気になって仕方ないんだ。
浩太さんはそんな圭司の気持ちを察してか、芹香さんが日本にいることを伏せてくれてるみたいだけど…。

「いや 俺だって必死に思い出そうとしてるよなつのためにさ…。でも ちょっとでも思い出そうとすると酷い頭痛がしてさ、意識失いそうになるんだよ… 医者にもさ、リスクもあるからもう諦めろって言われてる…。こういうケースだと、たぶん ずっと 戻らないってさ…」

「そうなのか… じゃあ おまえ なっちゃんとはどうすんの? 」

「どうするのって、俺となつは結婚してんだから…夫婦としてこのままやっていくつもりだよ。ただ なつがさ…今の俺じゃダメなんだよな~。だから このこと なつには内緒な。」

そっか 
もう 圭司の記憶は戻らないのか…。
ショックで頭の中が真っ白になった。

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