それだけが、たったひとつの願い
 誰もが認めるイケメンが私を愛しく思うなどありえないのだから、初めから期待してはいけないのだ。

 彼の中では、あのキスになんの意味もないのかもしれない。
 あの夜は私に同情しただけなのかもと考えたら、胸の奥がチクリと痛んだ。

 どうしてこんなふうにモヤモヤとした感情に押しつぶされそうになるのだろう。

 あとから甲さんに聞いた話だけれど、ジンはそのドラマで存在感を発揮し、主役の俳優を完全に負かせたらしい。

 台湾で“声なき王子”の声が話題となり、これまで以上に人気がうなぎ上りになったのを私が知るのは、もう少し先のことだ。

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