それだけが、たったひとつの願い
 本当に吸い込まれそうなほど綺麗な瞳だと見惚れているあいだに、彼の唇が私のそれと重なった。

「ごめんな。俺の仕事のせいで由依に嫌な思いをさせるかもしれない」

 未だに唇と唇が触れ合うような距離でジンが切なくつぶやいたけれど、私はそれを否定するように小さく首を振った。

「俺のこの気持ちは本物だから」

 再び重なった彼の唇はやけどしそうなほど熱くて、すぐに私の唇と舌を溶かし、自然とふたりの吐息も熱を帯びる。

 彼が私の髪に指を差し込んで後頭部を支えた。
 唇が離れては触れ合うことを繰り返し、そのたびにキスの温度が上がって濃度が増していく。

 抱き合って無心でキスをしたまま、いつの間にかリビングのソファーにふたりでなだれこんだ。
 いや、ジンが私を押し倒したのだ。

 彼の瞳はいつもの妖艶さに加え、獲物をとらえる肉食獣に変わっていた。
 首筋にキスを落とし、彼の右手が私の太ももを撫で上げる。

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