それだけが、たったひとつの願い
「私ね、転職するの。相馬さんの系列会社で事務の仕事をする。お母さんが施設に入れたら勤め始める予定なのよ」
以前相馬さんが、母が施設に入れば姉は昼間に母の世話をしなくてよくなるから会社で働けると私に話してくれた。
すべては相馬さんのはからいだと思う。
なにからなにまでお世話になっている相馬さんに申し訳なく思いつつも、心から感謝した。
「だから由依、もう少ししたら家に帰ってこられるよ」
「………」
「帰っておいで?」
なにも言わない私に同意を求めるように姉が顔色をうかがってきて、私は曖昧に笑って軽くうなずいた。
堂々と帰ればいいのだけれど、母が施設に行ったからといってそのタイミングで家に戻るのもなにか違う気がしたのだ。
それにあのマンションは、すでに私にとってはジンと会える特別な場所になっているから去りがたい。
以前相馬さんが、母が施設に入れば姉は昼間に母の世話をしなくてよくなるから会社で働けると私に話してくれた。
すべては相馬さんのはからいだと思う。
なにからなにまでお世話になっている相馬さんに申し訳なく思いつつも、心から感謝した。
「だから由依、もう少ししたら家に帰ってこられるよ」
「………」
「帰っておいで?」
なにも言わない私に同意を求めるように姉が顔色をうかがってきて、私は曖昧に笑って軽くうなずいた。
堂々と帰ればいいのだけれど、母が施設に行ったからといってそのタイミングで家に戻るのもなにか違う気がしたのだ。
それにあのマンションは、すでに私にとってはジンと会える特別な場所になっているから去りがたい。