それだけが、たったひとつの願い
「俺、ずっと日本で暮らそうかな」

「……え?」

「台湾に戻っても追いかけまわされるだけだし。……ここで由依と暮らしたい」

 ジンの気持ちは少しだけどわかる気がした。
 なにも悪いことをしていないのに、逃亡生活のようなことは誰だって嫌だし、そんなことが続けば精神的に疲れてしまう。

「向こうでの仕事はどうするの? オファーが増えてるんでしょ?」

「芸能の仕事は……やめてもいい」

 それは冗談だと思えない声音で、ジンと視線が合ったが切なくて真剣なまなざしだった。

「別にこのマンションじゃなくてもいい。うちの社長の息がかからない場所で住むところを探して一緒に暮らそう」

「……ジン」

「俺は由依さえいればそれでいいんだ」

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