政略結婚に隠された真実
「僕の事、知らない?」と言うこの人。

愛梨はじ――――ッと見つめ、記憶の端から端までをたどってみた。
だけど、愛梨の記憶の中には、全くその欠片もなかった。


こんなきれいな顔の人、見たら忘れないんだけどなぁ~。
う~ん、瑠依か新に聞いたら知ってるかしら?
年上・・・だよね、この人。


愛梨がう~んと頭を悩ませていると、ふわっと抱きしめられた。
「久しぶりだね、愛梨。」

え?久しぶり?私会ったことあるの?
会ったことあるっていっても・・・記憶が無いし・・・

わわわ、抱きしめられてるしッ!!
抱きしめられてることに気付き、顔がかぁ~っと赤くなって、動けなかった。

「・・・ははは、やっぱり覚えてないかぁ~・・・。なら、初めましてで行こう。」
ニッコリと見惚れるくらいの笑顔を向けて言った。

「はじめまして、愛梨。俺は、大翔。君の婚約者だよ」
「・・・え?」

私はピタッと固まってしまった。

これが、フリーズするって状態なんだわ。



顔にふと影が落ち、愛梨の唇に温かい柔らかい感触を感じた。
「え?」

突然の出来事で思考停止。
目の前の大翔はにっこりと笑っている。

「?!ななな・・・?!なんでッ!?」

突然の婚約者の発表と突然のキスに驚きと戸惑いでワタワタと動揺しきっていると、
大翔は愛梨の頭を優しくなでながら、可愛いねとつぶやいた。

「これからよろしくね、愛梨」
そう言って、ベッドから降り、ささっと身支度を終えて、今度は愛梨の頬へキスして部屋から出て行った。



「・・・私の・・・婚約者・・・? ・・・マジ?
 ウソ――――――――――――――――――――――――!?」

自分でも驚くほどの大きな声で叫んで、ベッドの中へもぐりこんだ。


さっきのキスだよね・・

・・・?唇と頬・・・。

自分の唇を押さえながらグルグル考えた。



昨日といい、今日といい、どうしてこうなった―――!?
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