政略結婚に隠された真実
すっと手を繋がれ、車まで歩いて行った。

繋がれたことに違和感もなく、手を繋がれていることを愛梨は気付かなかった。

愛梨の頭の中は、別の事でいっぱいだった。


月曜日からツイてないって、今週1週間、絶対いい事なんてないわ・・・。
そもそも、なんでまた送ってもらう様になったのかしら・・・。
会社の人たちに送ってもらったの見られたらたまったもんじゃないわ!!
絶対見られないようにしなくちゃ!!


大翔は、百面相で何やら決心している愛梨を見て笑った。
何を考えているのかは、なんとなく想像つく。
どうせ、朝から面倒だとか、会社の人に見られたら面倒だとか、面倒臭いことが起きたとしか思ってないだろう。そして、手を繋いていることなんて意識もしてないのだろう。


大翔はふと不安に思った。


愛梨は・・・男友達だったら誰でも手を繋ぐのか?




相変わらず、この車はいいシートにいい匂いだわ。
心地よい音量で流れる音楽を聴きながら鼻歌を歌っていた。


「あ、この辺りで良いです。停めてください。」
「大丈夫、会社の前まで送ってあげるよ。」
「いえいえ、こちらこそ大丈夫です。会社の前は邪魔になりますので。そのひっそりとした辺りに停めてください。」
「そう言わないで、会社まで送っていくよ。」

愛梨は横を向いて、ガシッと大翔の腕を掴んだ。

「碓氷さん!降りますって!!」
「だ~め~、会社の前まで行くよ」


ぎゃーぎゃーと車を降りる降りないを繰り返し、結局会社のエントランスと言うかなり目立つところで降ろされた。
しかも、助手席のドアを開けてもらうというオプション付きで。


チョー目立つんですけどー。


三白眼になった愛梨は、しぶしぶ会社の目立つところに降ろされた。


会社のエントランスのど真ん中に、ピカピカの高級車が横付けされ、高身長のイケメンが車から颯爽と降りてきたら、通勤途中の社員のみなさんも足が止まっている。
女性社員の皆さま方は、きゃあきゃあと言い始め、人だまりが出来ていた。


そして、社長令嬢の私が降りてきたらどよめきが起こった。
そりゃそうでしょう。
金曜の夜までは普通に電車通勤だったし、こういう男性の噂なんて全くのゼロだったわけだしね。


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