政略結婚に隠された真実
12 河内さんの心の内
俺は、外回りから昼休み前に帰社した。

いつも第1営業部の部屋に入ると、テキパキと仕事をする愛梨を一番に確認する。
今日は月曜日なので秘書室に居るはずだった愛梨はすでに自分のデスクで仕事を始めていた。

ん?
なんかいつものオーラより黒い?と思いつつ、いつものように一番に愛梨のところへ行った。

「愛梨ちゃん。ただいま~」
「あ、河内さん、おかえりなさい」

にっこり笑った顔を向けてくれるが、なんだか元気がない。気のせいか?

他人が見るとそう変化はないと思うだろうが、いつも見ている俺には分かる。


俺がかまうことで、女性の先輩たちに睨まれていたみたいだが、それを自分で撥ね退けてる。
可愛い顔して、精神的にめちゃくちゃ強いんだろうか。
そして“ちゃん付けをやめてほしい”と言っている愛梨だけど、諦めているのか特に嫌がることも少なくなった。
うん。いろいろひっくるめても、俺は愛梨ちゃんに構うことは止めない。


いつもは平気そうにしている愛梨だが、今日はいつもよりも怖い顔をしている。
何かを考えているのか、俺が目の前にいることを忘れているようだ。

だから話しやすいように、だけど確実な答えがもらえる様にストレートで聞いてみた。

「なんか、怖~い顔してるけど、嫌がらせ?大丈夫?」

俺は愛梨の目の前で手をヒラヒラさせた。

ハッと気づいたように顔を上げた愛梨は、にっこり笑って「問題なしですよ」という返事。

まぁ、大体の予想は、馬鹿うましかグループの嫌がらせだろう。


今度はちょっと話題を変えてみるか。

愛梨には笑っていてほしいと思うし。
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