ツケマお化けに恋して
男が再び彼女の腕を掴もうとしたので俺は彼女を抱き寄せ男から離した。
そして…

「彼女は今は俺の女なんだよ!一度捨てた女に慰めて貰おうなんて男として情けなくないか?とっとと失せろ!二度と美貴野に近づくな!」と睨む。

勿論付き合ってなど居ない。
咄嗟に出た嘘だ…
彼女も俺と付き合ってると言われて迷惑だろうが今はそう言うしか頭に浮かばなかった。

だが、男は歳の離れたオヤジでは納得いかないようだった。

しかし「今の稔よりずっと素敵だよ!」と彼女に言われ

「チッ!そぅかよ?!…」と男は肩を落として暗闇の中に消えていった。

彼の姿が見えなくなると、俺は彼女に「大丈夫か?」と声を掛ける。

よっぽど怖かったのだろう?
彼女の体は震え頬は涙で濡れていた。

彼女は涙を拭いながら「うん…大丈夫…ありがとう」と返事をする。

しかし、部屋の前まで帰ってきても彼女はまだ震えていた。

大丈夫な訳ないのに…聞いた俺も馬鹿だ…

「まだ震えてるぞ…今夜は俺の部屋で寝ろ!あいつがまた来ないとも限らないからな」

俺が言うと彼女は震えている手を握り締め震えを抑えようとしている。

「でも…辰次郎さんにこれ以上迷惑掛けると…」

「今更何言ってる?さんざん迷惑かけてるだろ?気にするな!」

「ありがとう…でも辰次郎さん仕事は?」

彼女は俺の仕事の心配をしている。
まださっきの恐怖心が取れていないだろうに…
俺もこのまま彼女をひとりにする事は出来ない。
部屋に入ると彼女に俺のスウェットを貸し着替えている間に彼女がテーブルに置いたコンビニの袋を覗くと弁当とビールが入っていた。
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