ツケマお化けに恋して
誤解……
桜の木の下ベンチに座りお腹の赤ちゃんとおしゃペリする。
幸せなひと時。

「今日はおじちゃんの送ってくれた蟹しゃぶだよ!
それからアワビのお刺身、アワビの肝はねぇ赤ちゃんの為なんだって!
アワビの肝を食べると瞳の綺麗な赤ちゃんが生まれるんだって!
たぶん迷信だろうけど…でも嬉しいよね。
皆んなあなたの事を思ってくれてるんだよ。

あなたのお父さんも優しい人だったから、あなたの事を知っていたらきっと大切にしてくれたと思う……

あなたのお父さんは背が高くて、オカマのくせに化粧は下手くそで、全然うまくなろうとしなくて…ツケマ盛り過ぎでツケマお化け!だけど、本当はイケメンで渋いおじさん。お料理が上手でたまに毒舌履くけどとても優しい人だった。あなたに父親からの愛情を与える事が出来ないけど……いつでもお父さんの事はお母さんが話してあげるからね」


「誰がツケマお化けだよ?!」


「えっ?」


声のする方を見るとそこには辰次郎さんが居た。

なんで……どうして辰次郎が居るの?


「父親の事なら俺から話させろ!」


「………」


辰次郎さんは私の隣に座り、お腹の赤ちゃんと言うよりわたしに話しだした。


「俺は全国展開してる外食チェーンママーズキッチンの社長、杉下英敏の長男、杉下辰次郎。大学を出て父親の経営する会社に一般入社、必死に働いて本部長まで登った。だが、腹違いの弟が社長の息子というコネを使って入社してすぐ係長の役職。そしてある雑誌には後継者として取り上げられた。俺の知らない間に決められていた。そんた時子供の頃に亡くなった母の幼馴染である弁護士に俺は父の実の子じゃないと聞かされた」

「父は入婿で別の男の人の子を妊娠している母と社長という地位が欲しくて愛情のない結婚をした。母は俺を産んでから体を弱くして入退院を繰り返して居た。それを良い事に愛情の無い結婚をした父は外に何人もの女を作っていた。そして子供まで作った。その事を知っていた母は死ぬ前に自分名義の財産を俺の名義に変え残してくれていた」

「その話を弁護士に聞いた時に分かったよ、父が俺と弟へ対する気持ちが違うって事を……俺は仕事に対する気持ちも薄れいろんな女と遊んだ。そんな時大学の頃の友人が店を出すから金を貸してくれと言ってきた。その頃俺には嫌な言い方だが母の残してくれた金が余るほど合ったからすぐに用意してやった。しかしその友人は店をオープンさせて一年後事故で亡くなった。俺は会社を辞め家も家族も捨て残された店【夜の花園】を引き継いだ」





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