ライ・ラック・ラブ
「君、お兄さんいたの」
「ええ。私は双子だったの。でも、私より数分前に生まれた兄は…その時点ですでに息をしてなかったんですって」
「そうか」
「私たちは春に生まれたので、それで兄には春樹という名をつけたと、父から聞いたことがあるわ」
「ふーん」
「正さん」
「ん?」
「ありがとう」
「…なんで礼言うんだ?」
「兄のこともあって、父はずっと息子を欲しがっていた。自分が興した事業を継いでくれる息子を。そういった意味で、特に長女の私は…その存在自体が父を失望させてるの」
「そんなことないよ」とムキに否定してくれた正さんに、私は微笑みながら顔を左右にふった。

その動きに合わせて、毛先を巻いている私の長い髪も、左右に軽く揺れる。

「私は、事業を継ぐ跡継ぎを生むために、相応しい相手と結婚しなければならないと、長年父から言われてきた。だからあなたとの出会いは、父が…仕組んだものだと分かってるわ。それでも私…は、あなたが好き。たとえこれが仕組まれた政略結婚だとしても、私はあなたを愛してるから…あなたと結婚できることが、私にとっては嫌々じゃなくて、むしろ、とても嬉しいことなんだと、正さんには知っててほしくて。だから“ありがとう”なの。こんな私と結婚すると決めてくれて、ありがとう。私と‥父を幸せにしてくれて、どうもありがと…ぅ」

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