ライ・ラック・ラブ
「いいえ。マンションのエントランスで待っていたの。あなた、そこで会わなかった?」
「会ってねえよ!ってかおい、あいつ何て言ったんだ?」
「…あなたとは恋人同士で、おつき合いを始めてもうすぐ3年目になると。そして‥そして、正さんと結婚しない方が良い、しないでほしい。なぜなら…あなたは、私のことを愛してないから、って。愛のない結婚生活は長続きしないって。正さん。あなた…あなたは、私のことを‥愛したことがありますか?」
「……それがおまえの“聞きたいこと”?」
「ええ」と私が答えると、意外にも正さんはフッと笑った。

そして右手は、髪をかき上げるように額に置いている。
そのハンサムな顔が、何かふっ切れたような、どことなくすがすがしい表情に見えるのはなぜだろう…。

「もちろん愛してるよ。って、思ってなくても言うのは簡単だよな」
「じゃ‥ぁ」
「口先だけでも“愛してるよ”と言えば、おまえは安心するから言ってやってただけのことだが。これも俺なりの“愛情表現”だと思ってくれよ。大体、おまえも言ったじゃないか。これは社長が仕組んだ出会いであり、政略結婚だと」

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