ライ・ラック・ラブ
なじみある優しい声につられるように、私が顔を上げると、そこには佐久間さんが立っていた。
彼の凛々しい顔には、どことなく私を気遣うような表情を浮かんているように見える。

「何かあったんですか?」
「…ううん。何も。悪いけど先を急ぐので」
「おっ、と」
「あ…ごめんなさい」
「ちょっと待って‥ください」

正面にいる佐久間さんを通り過ぎようと、一旦右によけたはずなのに。
佐久間さんとぶつかりそうになった私の腕を、彼は咄嗟に、でも優しく掴んでくれた。

「佐久間さん…あの」
「はい?」
「私………」
「お嬢様。やっぱり何かあったんでしょう?結婚式のことで、何か不具合でも発生したんですか?」
「不具合…そうね。控えめに言っても、その言葉は当てはまると思うわ。でも大丈夫。何とかなるでしょう。それじゃあ」
「ダメです」
「…え?」

あれ?私……。

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