ライ・ラック・ラブ
「今のお嬢様は、全然大丈夫じゃありません。その証拠に、強がって笑顔を向けながら泣いているではありませんか」

佐久間さんは私に諭すように言いながら、その手で私の頬に流れ伝う涙を、そっと拭ってくれている。
この人は、私の父より私を心配してくれていることが嬉しくもあり、少し悲しい…。

「佐久間さん。あなたは…私の父より優しいのね」と言う私に、佐久間さんは曖昧な笑みを浮かべて応えると、「とにかく、ここは人目がありますから、私の車に乗ってください」と言った。

「ええ、そうね‥あ。佐久間さん。あなた、お仕事があるんじゃないの?」
「いえ。今日は休みです。社長に用があって会社(ここ)に来たんですが」
「まあ。だったら余計に」
「いいんです。日を改めても全然問題ない、完全な私用なので。さあお嬢様、行きましょう。これから用があるなら、そこまで私が送ります」
「…分かったわ」

優しいながらも有無を言わせない口調で言われた私は、佐久間さんに先導される形で、彼の車に乗った。

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