ライ・ラック・ラブ
「社長は、卒業後、社長の会社で働くことを条件に、大学の学費を払ってくれました。社長には恩があります。だからと言って私は、社長をフォローしてるんじゃありません。正直に言うと、たとえそれが愛情表現の一つであっても、やっぱり厳しすぎる言い方だと思う。私としては、同じ思いやりでも、相手の心を傷つけない方を選びたい。その相手が自分の子なら尚更……って思うのは、やっぱり親を知らずに育ったからかな。これって自分の希望というか…願望ですよね。すいません」

そう言った佐久間さんの横顔が、寂しそうと言うより、子どもが泣くのを我慢しているような、強がっているように見えたせいか、私は咄嗟に「そんなことないわ!」と、叫ぶように言っていた。

「‥え?」
「そんなことない。だから謝らなくていいの。むしろ謝るのは私の方だわ」
「えっ!な、なんで…」
「あなたは心がとても優しい人だから、誰のことも悪く思うことなんてできない。それなのに、父の秘書をしているあなたに、こんなことを話してしまって……ごめんなさい」

座ったまま、伏し目がちに頭を下げて謝る私に、佐久間さんは慌てた口調で「お嬢様っ!」と言った。

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