ねぇ、好き?
「ねぇ、阿部。彼女ってもう仕事、終わる?」

「ん?いや、終わるのは20時過ぎだから……、まだ1時間くらいあるかな」


阿部は腕時計を見ながら答える。


「彼女の仕事が終わるまででいいからさ。話、聞いてもらってもいい?」


阿部に話すより、佐々木に直接話をした方がいいのはわかっているけど……

それが出来ないでいる私は、どういうつもりで佐々木が「付き合おう」なんて言っているのか、男の意見を聞きたいと思った。


「いいよ」


そう言ってくれた阿部の前に座り、コーヒーを注文する。

店員さんが運んでくれたコーヒーを一口飲み、


「阿部はさ……、好きでもない女に、冗談で“付き合おう”なんて言う?それも何回も……」


真剣な顔で言う私に、


「はぁ?」


阿部は“意味がわからない”というような顔をする。


「言うわけないだろ。好きな人でなければ、そんな事言わないよ」

「だよねぇ……」


じゃぁ、佐々木は冗談なんかじゃなくて、本当に私を好きだと思ってくれているって事?

でも、そんな事はないか……

だって、佐々木はずっと一人の人ってわけじゃないけど、いつも彼女がいるんだから。


< 16 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop