カリスマ社長に求婚されました
「蓮士、そんな話をするために来たのなら、もう戻らせてもらう」

優一さんの不快感をあらわにした口調に、さくがの蓮士さんも肩をすくめた。

「悪い、悪い。そうだったな。本題だけど……」

蓮士さんが席に着くと優一さんも座り、ようやく商談が始まった。

ここは丸テーブルになっているから、優一さんと蓮士さんが隣合わせになっている。

そして私は優一さんの隣に落ち着くと、指示に従いカタログを差し出した。

どうやら蓮士さんは、お父さんが結婚記念日にお母さんへ贈る指輪を見にきたとか。

お父さんは仕事で全国を飛び回って忙しいとかで、蓮士さんがある程度目星をつけて相談する予定にしているらしい。

さっきまでは、優一さんに挑発めいたことを言っていた蓮士さんも、真剣にジュエリーの話を聞いている。

それにしても、優一さんの商談は本当にお手本になり、今回もかなり感心してしまっていた。

ジュエリーのコンセプトや宝石言葉、その人の雰囲気によって似合うデザインを提案している。

これくらいできなければ、ショップの店員になんてなれないのかも……。

と考えてたとき、優一さんに急ぎの電話がかかってきたと、オフィスから呼び出しを受けた。
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