好きって言っちゃえ
「違うのよ、それがこの子自分が近々死んじゃうって思い込んでるのよ」
「え?舞ちゃん、どっか悪いの?」
それまで黙って食べていた悠一が心配そうな顔をして舞を見た。と、その質問にも舞より先に悦子が答える。
「悪くないわよ。健康診断したって一度も何にも引っかかったことないんだから。ただ、ほら、悠ちゃんも知ってる通り父親と姉が胃癌で亡くなったからDNA的に自分もそろそろ胃癌で死ぬって思ってるだけ。バカでしょ」
「そうなんだ…」
黙々と食べる舞を見て、悦子が言っていることが嘘じゃなさそうだと確信する悠一。
「DNAって。それだったら会長のDNAも受け継いでるんだから、結構元気で生きていられる可能性も高いっしょ?ねぇ、会長」
堪えきれず、本格的に笑ってしまいながら光俊が悦子に同意を求めた。
「そ〜なのよ。いい事言ってくれるわね、平野くん」
「あ、でも平野さんも結婚しないって、言ってましたよね」
航が不意に先日の話を思い出して今度は光俊の顔を覗き込んだ。その瞬間、光俊の顔から笑顔がスッと消えた。
「…なんで今それ言うかね」
小さく呟いた光俊の言葉に今度は舞の顔に不敵な笑みが浮かび上がった。
「過去にこっぴどく振られたとか?」
「あ、なんか、金がらみだって言ってましたよね」
なんの悪気もなく航が答えた。
「…」
「ギャンブルで擦って借金まみれとか?あ、だから賞金にこだわるんだ?」
茶碗を持ったまま笑いながら横にいる光俊を見た舞だったが、
「…」
クールな目でチロりと光俊に見られて、笑顔が固まった。
「…あ、まさか、…当たっちゃった?」