好きって言っちゃえ
「それで、借金返済の足しに賞金が欲しいってわけか」
と、冷静に悠一。
「ははっ。バレちゃいましたね」
苦笑いをする光俊。
「俺は、借金はないですけど、ちょっと個人的に新しいカメラが欲しいんで賞金は狙いに行きますよ」
航が力強く握りこぶしを光俊にみせる。
「おうっ」
光俊も笑顔で箸を持ったまま右手を握ってみせる。
「あ、もちろん、僕も頑張りますよっ」
航と光俊の間に挟まれた秀人が左右をキョロキョロしながら両掌をグッと握って二人に見せつけた。
「ああ〜、分かった、分かった。頼むぜ、若者よ」
光俊が秀人の肩を掴んだ。
「それじゃ、そろそろ行くか」
3人の様子を微笑ましく見ていた悠一はそう言うと、湯呑のお茶を飲み干した。
「はい。ごちそうさまでしたぁ」
光俊たちは揃って手を合わせと、悦子と、剣二を残して出て行った。静かになった居間でテーブルに肘をつき両手で湯呑を持って悦子は、ため息交じりに剣二を見た。
「平野くん借金があるって、剣二さん知ってた?」
「いえ。金にシビアな奴だとは思ってましたけど、まさかお父さんの借金肩代わりしてるとは知りませんでしたね」
「結婚できないっていうぐらいだからきっと結構な額よね」
「でしょうね」
「舞にはあのくらいはっきりモノ言ってくれる子がいいと思ってたんだけど、なかなか上手くいかないわね」
「あ、お義母さん、平野狙いでしたか?」
「まぁ、私の好みとしては西尾くんなんだけど。ま、いいわ。ここで毎週ご飯食べて、バレーの練習してたら、仕事以外の面も見えて舞も誰かの事気になってきたりするわよね、きっと」
「そのためのバレー大会に、食事会ですか?」
「もちろんよ。なんとしても、あのへそ曲がりの結婚観変えてやるんだから」
そう言ってグッとお茶を飲み干す悦子を見て、笑いがこみ上げて来るのを抑えきれない剣二であった。