性悪女子のツミとバツ
佐藤英介は、仕事ではとても厳しい上司だ。
部下だけでなく自分にも厳しく、厳しいだけではなく面倒見もよく、周りからの人望は厚い。
顔も流行の塩顔で、いわゆるイケメンだが、その厳しさ故に女子からあからさまに騒がれることはない。
と、まあ、男の俺から見ても、とにかく仕事の出来る、いい男だ。

「ちょっと、英介さん、離して…それに、まだ言っちゃダメでしょ。」
「ちょっとくらい、いいだろう?どうせ、来月にはみんなに知らせるんだ。」
「でも、まだダメでしょ。ごめんなさい、田村君、黙ってて。」

その仲睦まじいやりとりを聞いて、何となく来月に何を聞かされるのか予想が付いた。
そして、その予想通り、それから半年も経たないうちに、松岡さんは“佐藤さん”になった。

後から事情を聞けば、別の支社から異動してきたばかりの佐藤さんと、電撃的に恋に落ちたというわけではなくて。
どうやら、彼女の新人時代の指導係を務めたのが佐藤さんで、その頃から二人して惹かれあっていたのが、ようやく実を結んだらしい。

佐藤英介という男にも。
二人が長年温めてきただろう恋心にも。

俺は、完敗だった。

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