愛してるなんて言わないで

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2月14日のバレンタイン。

今日も赤阪君は寒い中、私を待っていてくれた。


告白する勇気はなかった。

けれど、いつもありがとうの気持ちだけでも伝えたくて

前の日に作ったチョコ。


気持ちを伝える勇気がなかったのは…


伝えてしまって


今、2人で会えてるこの少しの時間まで


失うのが恐かったから。



「寒かったでしょ?待たせてごめんね。」


「いや、俺が勝手に待ってるだけだから。」


歩き出した赤阪君を呼び止めた。


チョコを渡すために。


だけど…


お礼だけ伝えたいだけなのに…


緊張して

チョコを渡すと思だけで飛び跳ねる鼓動…。


「何?どうかした…?」


赤阪君は

学校で沢山の女子からチョコを貰ってるのを見かけた。


なら、私のチョコもその沢山貰った中の1つになればいいだけなのに…


今日、学校で何度か赤阪君がチョコを貰ってる姿を


思い返せば思い返すほど…


なんでだろう…


渡しずらくて


何も言えないまま

少しの時間が経った。



「寒っ…」


その声に顔を上げると

白い息を吐きながら空を見上げる赤阪君。


こんな寒い中待っていてくれたんだ…寒いに決まってる。



「ごめん、なんでもない。行こう?」

歩き出そうとした時

不意に掴まれた手のひら



驚いて

見上げると

パチリと目が合う。


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