愛してるなんて言わないで


「騙したけど悪い?

結花さんだって何も疑わないの可笑しいよ。」


テーブルを挟んで

言い合いの真っ最中。


颯太は長引くなと諦めたのか自分からゲーム機を取り出して遊び始めた。



「だって私、入社したばかりでこんな待遇の話とか知らないし」


「勝手に予約入ってて不思議に思わなかったの?」

「そういうものなのかと思ってたんですっ‼」


「素直なところがまた、
可愛い。」

「颯太の前でそんな変なこと言わないで下さい」



ぷんぷん怒る私を、翔太さんは常に、意地悪な笑顔を浮かべたまま

見ている。



「どうしてこんな勝手なことしたんですか?」

「勝手にしなきゃ、嫌がるでしょ?」


それは…そうだけど。



「ちゃんと話しがしたかったんだ。

だから、結花さんを逃がさないために、勝手にこんなことしたよ。

悪い?」


しれっとした態度で聞くから


自分の中で意見がぶれる。



悪いはずなのに…


悪くなく思えてしまうのは…


相手が好きな人。だからなのだろうか…。


「何も言い返さないって事はOKってこと。

だよね?

それなら、まず、話しは一旦終了。


颯太ー風呂入りに行くぞー?」


と、勝手に終了させられた話し合い。


完璧に翔太さんペースで腹がたつのに…

颯太が生まれて初の男風呂を体験できるのかと思うと…


文句も飲み込んでしまった。



完璧に

翔太さんの手の内で踊らされてる気分だ…。


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