愛してるなんて言わないで


颯太を間に挟んで手を繋ぎ

まるで本当の家族のように園内を歩いた。




「猿っ!猿っ!猿だよっ!」

猿山を見つけて目を輝かせた颯太。

それに気づいた彼がひょいと颯太を肩車をして「よく見えるだろー?」と笑う。

「スゴイッ!見えるし、肩車楽しいっ!」


初めての肩車体験に、なかなか下りたがらないのを嫌な顔一つしないで、そのまま歩き出す。

「あのっ…肩を痛めたら大変なので、下ろして下さって大丈夫ですっっ!」


ひやひやしながら、声をかける私を一瞬見つめた彼が「はい。」と私に左手を差し出した。


それがどういう意味かも分からなくて、首を傾げてみせると「家族ごっこなら、夫婦っごっこもでしょ?」と言われて、顔が一瞬で火照る。



家族ごっこは…颯太にとって家族ごっこであれば良かっただけだったんだけど…


依子がどんな風に話しをしていたのかも分からなくて…


今日…一日だけなら…

私もそんな真似っこごっこにときめいても…いいのかな?

なんて頭をよぎって

右手を差し出した。



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