ノーティーアップル
October


ほんとに、浮気相手にはいい男を選んだと思う。
こんなに口が堅くて、ほかの女の子にも目移りしない男、なかなかいないと我ながら思う。

こちらの視線に気づいたのか、同僚の女の子と話す彼女の笑顔が少し引きつった。


…まあ、それがわかるのは僕くらいだろうけど。


僕の視線がほかの人にも気づかれないか、気にかけてるんだろうか。


いっそのことバレてしまえばと思ったことだって何度もある。

でもそこで踏みとどまってしまうのは自分が明らかに彼女にとって都合のいい男だから。

このままあてもなくさまよえばいいのだろうか。
二人で過ごす未来も考えてみたことはあるけど…まあ、彼女がこのままの関係をお望みなら何も言えない。


結局は自分本位でいろなんて言いながら、一番大事なところは踏みとどまらせるんだから。


ひどい人だ。


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