早川彩澄の華麗なる日々

何も言わない店員に気が大きくなったのか、さらに男は言葉を付け足す。


「でよ、普通待たせたお詫びとすりゃ俺が注文したのはタダになるよな?普通よ?」


周囲で聞いている者に、それが狙いかと思わせる。男の声は大きく、店内の客や従業員は早川と男に注目している。


客は早川を気の毒に思い、男に対しては不快感が芽生え、居心地の悪さを感じている。


従業員はというと、二人を気に掛けながらも仕事を続けており、多くは"男に対して哀れみの念を抱いている"。


口を閉ざし頭を垂れる早川に、男は口汚く罵る。


「お前のせいでこっちは迷惑してんだよ、バイトだろうが正社員だろうが責任取れよ。ていうかな、お前みたいな屑がいると迷惑なんだよッ。さっさと死んだ方がいいんだよ。この役立たずッ、さっさと消え――」


男の発言は途中で止まった。
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