嘘から始まる恋だった
今まで、前にある自販機に視線をやっていた男が急に私を見て熱い眼差しを向けてきた。
「……でも、そこまで迷惑かけれないよ」
「お互いの為に1番いい選択だと思うけど…」
「お互いの為?」
「お前は、俺と住むことで義兄から身を守れるし、安心して夜を過ごせる。俺は、お前と住むことで偽装の疑いをカモフラージュできる」
「偽装だって疑われているの?」
「なんとも言えないが、五分五分ってとこだろう…」
「そうなの⁈てっきり、縁談を断ったって言ってたから了承してもらえたと思ってたんだけど…」
「数日の交際で納得するはずがない。すぐに別れると思っているのさ…だから、一緒に住むことで疑いをごまかせる」
そうかもしれない…
政略結婚をさせようと考えている人に、たった数日の恋人なんて納得させる材料にならない。
だからといって…
「一緒に住んでいるってことにしておくだけじゃダメなの?…ほら、アパート代もあるし…」
切れ長の目を細め見つめてくる男。
こういう時の高貴は、不機嫌なのだということをこの数日で覚えた。
「……麗奈」
機嫌が悪いくせに優しく甘い声で名前を呼んでくるから…
ドキっとして
「…は、はい」
高貴の手が私の耳を隠している髪をかきあげて…耳側で囁く。
「ダメだ。お前は俺と一緒に住むんだ…わかったな」
ちょっとかすれた声と耳に触れる指先にゾクッときて、コクコクと頷いてしまう私。
機嫌よくなった男はフッと笑い離れてくれた。
「アパートは、解約するからな…」
「しばらくだけじゃないの?……まだ、数えるほどしか経ってないのに解約なんて…それに、私達の契約が終わったら住むところないんだけど…」
「その時に考えてやるから、今は言うことを聞いた方がお前の為だぞ」
そう言われると言い返せなくなる。
「……」
「夕方、ロビーで待ってろよ」
「……うん。お仕事、大丈夫なの?」
「昼休みを返上してでも週末に残業なんて俺はしない」
あ、そうですか…
じゃあなと私の頭をポンポンと優しく叩いて、高貴は仕事へと戻って行った。
私はというと、高貴と一緒にランチできると思っていたから…
がっかり。
がっかりしている自分に…戸惑った。
そんな自分を拭い去る為に、わざとヒールをカツカツ鳴らし階段を降りていった。
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夕方のロビー
そこで待つ、私と優香。