嘘から始まる恋だった
先にやってきたのは…義兄だった。
「野村さん!お待たせ…」
頬を染める優香が首を小刻みに横に振り、そんなに待ってないと微笑む。
義兄は、優香に微笑むと私を一瞥した。
私が優香といることが不思議だったのだろう。
「……花崎さんも一緒にどう?」
優香に私達が義兄妹だと知られているとも知らない男は、あくまでも他人に徹するつもりらしい。
優香には、漏らさないように口止めしてあるとはいえ、ここにいるのは3人だけ…
何を考えているのかわからないけど…優香が傷つくのは見たくないから
「義兄さん、彼女は私達が義兄妹だって知ってるの。だから、赤の他人の振りをする必要なんてないのよ」
そこまで言えば、私が言おうとしていることがわかるだろう…
義兄が、苦々しく口元を歪めた気がしたが、すぐに笑みを浮かべた。
「……そうか…いずれは、僕の口から野村さんに言うつもりだったんだのに…まぁ、そのほうが後々誤解されなくて済むからよかったよ」
目の前にいる男は、どう見ても優香に好意を持っている爽やかな好青年にしか見えない。
あの、ギラついた男とは別人のように見えるのに、男から感じる視線はゾッとするもので…私の気のせいであってほしいと思う。
思わせぶりな義兄の言葉に…膨らむ期待で胸をときめかせている優香は、その視線に気づいていない。
そこへツカツカと靴底を鳴らして歩いてくる高貴。
「やぁ…常盤君と野村さん。麗奈と3人で集まって何の話をしているんだ?」
義兄の眉がピクッと動いたのを見過ごさなかった高貴が、ワザと私の肩に手を乗せた。
義兄は、上司である高貴に頭だけを下げ一言も話さない。
あっ…
昼間に相談しようと思っていたのに…高貴との同棲話で言うのをすっかり忘れていた私。
「優香も私も待ち合わせの相手を待っていただけよ」
ん?
と一度考えた男に…間があった。
優香と義兄を交互に見て『あぁっ』と納得する高貴。
「池上部長と麗奈はこれからどこに行かれるんですか?」
優香の問いに
「んっ…俺ん家。あっ、でも、お泊まり用どうする?」
一度、戻ることになっているのに…とぼけて私の顔を見て話しだす男。
「ちょっと…ここでそんなこと言わないでよ」
「いいじゃないか…照れるなよ」
私の頭をワザとグシャグシャにして撫でだす。
「…もう、見せつけないで下さいよ。ねぇ、常盤さん⁈」