嘘から始まる恋だった

「うっ…寒いね…」

「……寒いなら…こうすればいい」

おもむろに私の手を取り手を繋ぎだす。

…恋人同士のように指を絡める仕草に戸惑う私。

「……どうして…」

「こうした方が暖かい」

さらに…男のコートの外ポケットにそのまま手を突っ込む行動についていけない。

そんなことで冷たい手が温まるはずがないのに…

手を抜こうとするとグッと握る男の手。

「もう、遠慮しないって言っただろう」

「……手を繋ぐことを遠慮してたの?」

呆れたようにため息をつく男。

「鈍いにもほどがあるぞ。それともわざとなのか?」

何が言いたいのかさっぱりわからない。

そんな私に焦れる男は…急に早く歩きだすから、手を繋いだままの私は小走りに追いかける羽目になった。

「……ねぇ、待ってよ。歩きにくいから手を離して…」

「離さない」

「えっ…」

ーーーー

息をきらす私を無視して、とうとうマンションの中についてしまった。

もう、なんなの⁈
訳がわからない。

高貴は、コンシェルジュから荷物を受け取り空いている手に荷物を持った。

そのまま引きづられるようにエレベーターの中に…

やっと、整った息で

「いったい、なんなの⁈」

「……部屋に行けば教えてやる」

はい?

しばらくの無言の後、高貴の部屋の階に止まったエレベーターから降りるとすぐ目の前にあるドア。

この階は、この部屋しかないようだ。

驚く暇もなく、ロックを解除する高貴に引っ張られ奥へと連れて行かれる。

そこには…大きな一枚ガラスの窓が外を景色を映していた。

モノトーンで統一されたシンプルな男らしい部屋。

荷物をテーブルの上に置いた男が繋いだ手をやっと離してくれた。

コートの脱ぎ、ソファに放り投げるとネクタイをキュッキュッとゆるめ、その場に立ち尽くす私を抱きしめてくる。

いったい何が起こっているのか理解できない私。

「……麗奈。俺がお前を好きだって言ったら信じるか?」

一気に頬が真っ赤に染まる。

信じられないと首を左右に振るしかできない私をさらに強く抱きしめる腕。

「だよなぁ…信じさせるにはどうしたらいい?」

「……」

「いくらお互いの為に手を結んだ相手だからといっても、好きでもない女を守りたいと思うか?」

男じゃないからわからない。

「なら、好きでもない女の為に世話を焼くと思うか?」
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