嘘から始まる恋だった
「…⁈」
「そこでだ…お互い困ってる者同士、助けあわないか⁈君なら専務の義娘ということで会長も認めるだろう」
「……どういうことですか?」
「俺が君の彼氏役を演じるから君は俺の彼女役を演じてほしいって言ってるんだよ」
はい⁈
「そうすれば、君の義兄さんから君を守ってあげれるし、専務にも俺が君の彼氏だと紹介すれば納得するだろう。君は俺のお見合い話を破談にできるし、お互いメリットしかない」
「そうでしょうか?」
「俺と君のどちらかが決着がつき次第、徐々に距離を置いて別れたことにすればいい。君に好きな人ができるまででも構わないよ」
こんな好条件を提示されると心が動かないわけがなく…
「部長は、それでいいんですか?」
「あぁ、社長になる為に好きでもない女と結婚するなんてまっぴらだ。実力でなってやるさ」
会長の薦める縁談を受ければ、強固の後ろ盾を得て候補者の中から抜きん出ることができるのに…彼以外の候補者ならすぐさま受けるだろうが、彼は断るというのか⁈
「……」
「それで、返事はイエスでいいんだね」
そこまで言い切る部長に頷く私。
「明日には、会社中に知れ渡っているだろうから話を合わせておかないといけないな…」
そうだった…会社の前で大胆な事を…
その後、口裏を合わせた私達。
受付にいる私に一目惚れしていた部長が、常盤君(義兄)といるところを偶然見かけ彼氏の座を奪われる前に告白してきて付き合う事になったと言う無理矢理感たっぷりの話である。
だが、口のうまい部長がそう言えば、その作り話は疑いもなく受け入れられてしまうのだろう。
何度も、部長と対応策を練り明日から恋人同士を演じるのだと思うと、みんなを騙しているようで罪悪感が…でも、その一方でドキドキしてなかなか眠れなかった私がいた。
そして…
次の日ドキドキしながら会社に行けば、午前中は好奇の目で見られていたが、午後を過ぎた頃には女子から羨ましがられだしたのだ。
部長の作戦 その1
私は、あえて何も話さない。その代わりに部長が朝出社してくると受付で堂々と…
「おはよう…麗奈。昼休み一緒にご飯食べよう。後で迎えに来るよ」
大勢が出社する中で大胆に優しい声で名前を呼びランチへと誘うから、足を止める人もいれば、振り向く人もいた。
そんななか、私は言われるまま頷くだけでよかった。