嘘から始まる恋だった
「あぁ、なんて可愛いらしいんだい。お嫁にやるのが勿体無くなるよ」
目にハンカチ手を当てて感傷に浸る義父は、お嫁に出す父親の気持ちになっているようだった。
「もう、お義父さんたら…パーティーに行くだけなのにどうして泣くのよ。変なの…」
「……そうだったね…今日は…」
意味ありげに1人で納得して解決している義父に母も笑って義父に聞こえないように囁いた。
『きっと、麗奈をお嫁に出したくないのよ。あなたが可愛くて仕方ないのね』
クスッと肩を揺らし2人で義父を見つめていた。
「そろそろ時間だ…麗奈ちゃんいこうか?」
「はーい」
返事をしたものの…
いざ、高貴に2ヶ月ぶりに会うのかと思うと緊張してきた。
高貴はどんな顔をするだろう?
喜んでくれるだろうか?
もしかしたら、避けられるかもしれない。
色々な思いで頭の中がこんがらがる。
そんな葛藤の中、車はアッと言う間に会場のグランドホテルについていた。
ロビーで立ち尽くす私の背をそっと押してくれる義父。
「僕がいるから大丈夫だよ」
大広間前のドアの手間で受付するらしく、そこには優香がいて、来客の対応に忙しそうにしていた。
私達に気づいた優香が微笑む。
私もつられて、緊張していた顔を引き攣りながらも微笑んだ。
近くから聞こえた話し声に心が傷んだ。
『今日は、池上専務の婚約披露もあるらしいじゃないか⁈』
『彼女が来ているということはお相手は…やはりそうなんだね』
『だろうねぇ…これで池上専務も大きな後ろ盾を得て次の社長に決まったも同然だ。今のうちに挨拶してくるか…』
どこかの会社の重役なのだろう⁈
この機会に顔を売っておくチャンスとばかりに彼女に近寄って行く。
『この度はおめでとうございます。大臣にご挨拶したいのですが、どちらにおられますか?』
『あ、ありがとうございます。父は急な用事ができたとかで少し遅れるそうなんです』
『そうですか⁈……なかなかお会いする機会もないので来られましたら後でまたご挨拶させていただきます』
そう言って名刺を彼女に差し出す男達に義父がボソッとつぶやいた。
『来られたらいいがね…まぁ、無理だろうね』
その時、あちらこちらでけたたましく鳴る携帯電話の音。
もちろん、義父の内ポケットからも…
待っていたかのように内ポケットから取り出し嬉々した声で電話に出る義父。