そのキスで教えてほしい
首をわずかに動かし横にある相手の顔を確認しようとしたけど、それよりも早く崎坂さんの唇が私の耳元へたどり着いた。

「泣いた理由を聞いてたはずなんだけど。……鈴沢、どうなの? 傷ついたって認める?」

言葉と一緒にかかる息に捩じ伏せられた。
背中がぞくっとして、ぼうっとする頭がコクンと頷く。

熱っぽい視界に崎坂さんの顔が映る。微笑んだ彼は私の頭を優しく撫でた。

「俺もキツいこと言われて結構こたえたんだけど。だからお詫びに明日、俺とデートして」

「……え?」

言われたことがすぐには理解できなくて、崎坂さんをじっと見つめていたけど、徐々に頭が働きはじめて私は大きく目を開いた。

「え、あの、そんな」

「予定ある?」

「な、ないですけど」

「それなら決まりな。明日、よろしく。後で時間とか連絡するから」

「待っ……」

強引に押し決めた崎坂さんは私から離れるときぽんぽん、と頭に触れ、唖然としている私に唇の端を上げて見せたあと、歩いて去っていってしまった。

私はしばらく立ったまま動けず。ありえない……。

何度か目をぱちぱちしながら、崎坂さんの言葉たちを思い出していた。

一体、崎坂さんはなにを考えてるの?

唇が触れた頬と耳に手で触れ、高鳴る鼓動にまた体が熱くなった気がした――
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