そのキスで教えてほしい
ずっと、本気にしちゃ駄目だと思っていた。
崎坂さんが私をかまうのは、からかっているだけだって。

だから惹かれないように言い聞かせていたし、好きという感情を抑えていた。

でもそれは無意味。
恋におちるのは、どうしたって止めることはできないのだから。


「んっ……」

ベッドに倒されて、覆いかぶさった崎坂さんが私の前髪を撫で上げ、深いキスをしてきた。

触れたり押しつけたりするだけじゃない。
舌がゆっくりと絡まって、ぼうっとするくらい長く唇を重ねる。

こんなに息があがるほどのキスは初めて。

「崎坂さん……恥ずかしい」

熱っぽく目元を潤ませながら身をよじると、崎坂さんは鼻先でふっと笑った。

「前に鈴沢が訊いたよな。『あれはキスですか?』って。俺は“あんなのはキスじゃない”って言っただろ。俺にとってキスはこれだって教えてるんだけど」

私が顔を赤くして崎坂さんを見ていると、彼はクスクスと笑った。
会社から崎坂さんの部屋へ移動したら彼は余裕を取り戻したらしい。

「……そういえば今日、部署の女の人たちから飲み会しませんかって誘われていましたよね」

「ああ、聞いてたのか?」

「聞こえたんです」

むすっとした表情の私を、崎坂さんは口許を緩めて見てくる。

「もちろん、ちゃんと断ってる」
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