旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
半年間かけて作られたウエディングドレスは、ミリ単位で私の身体にジャストフィットさせており、さらに運の悪いことに身体のラインがしっかり見えるマーメイドタイプなのである。
つまり当然、僅かなガニ股だって許されない。
十センチのヒールを履き下半身のラインが崩れないよう洗練されたポーズで立ち続けることは、今の私にとって地獄だ。
なんとか持ち前の根性で耐えてきたけれど、さっきから足の震えが止まらない。きっと客席からは微妙に崩れ始めた私のバックスタイルが見られているのだろうと思うと、悔しいやら情けないやらで、原因の一端である颯を責めずにはいられないのだった。
「この日のために抜群のプロポーションを作り上げてきたのに……っ!」
指輪の交換の合間にもボソボソと嘆くと、颯は私の薬指にマリッジリングを通しながら飄々と返した。
「いいじゃんか。お前の抜群のプロポーションとやらは俺が堪能したんだから」
あまりにも俺様な台詞に耳を疑い、私は「はぁ!?」と小声で叫んで顔を上げた。
すると、颯の手がそれと同時に私のベールを捲り、頬を包んでジッと見つめる。
「お前が綺麗なのはドレスを着るためじゃなく、俺に愛されるためなんだからいいんだよ、ばーか」
あまりにも恥ずかしい軽口に、私の顔が一瞬で赤く染まる。
そして文句を言い返そうとした口は、ちょっとフライングした誓いのキスに塞がれた。