旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
そんな風に温かな家族の祝福に包まれて、私は祭壇に颯と隣り合って立つ。
司祭様がよく通る声で朗々と聖書を読み上げるのを、私と颯はおごそかに感慨深く――ではなく、潜めた声でケンカをしながら聞いていた。
「さ……最悪……っ、オートクチュールのドレスが台無しなんですけど……!」
「え、俺のせい? いやまあ半分は俺の責任はあるかも知んないけどさあ」
「半分どころじゃないでしょ……! あんな、あんなアレなソレでアレなことしといて!」
「お前、今それ言う!?」
涙目で颯を睨みつける私の足腰は、微かにプルプルと震えている。
それもこれもすべては昨夜のせいなのだ。
島のホテルに前泊した私と颯は、いよいよ結婚式を迎える感動のあまりムードが盛り上がって、ついうっかり初夜をフライングしてしまった。
律義にも颯は結婚後まで夜の営みは我慢してくれていたのだけど、満天の星空と潮騒はあまりにもロマンチックで……ほんの一日だけ、私達は先走ってしまったのだ。
けれどそれが良くなかった。
初体験に伴う想像以上の痛みは翌朝までガッツリ残り、私は気合を入れていないとまともに腿を閉じて立っていられないほどだった。