旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

「颯さまはコンツェルンの常務というお立場ながら、執行役を自ら担って精力的に活動されていますからね。本当に頼もしいお方ですよ」

さやかはそう言いながら、私のティーカップに紅茶を注いでくれた。ファーストフレッシュ独特のグリニッシュな香りがふんわりと部屋に広がる。

それに口を付けながら、さやかの言うこともウソではないなと考える。颯がやたらめったと仕事を頑張っていることは、ここに来て一週間になる私にもだいぶ分かってきた。


結城の関連している事業の株価は、充さんが継承権を放棄したときに一旦大きく下落している。それほど一族経営世襲制の結城コンツェルンにとって、継承権問題というのは大きなことなのだ。

けれど颯が継承権を受け継いでから一年、株価はそれを回復させるどころか上回る数字を見せている。株価だけじゃない、事業実績も見事なV字回復を見せた。

ようは評判で落ちた数字を、颯は実力で回復して見せたのだ。

颯に関する予備知識をなにも蓄えずここに来た私だったけど、この一週間さすがにちょっとは夫の仕事のことを知ろうと勉強した私は、彼の敏腕ぶりにはっきり言って感心してしまった。

まあ、実に負けず嫌いなあいつらしいとは思うけれど。
 
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