旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

「まあいっか、明日には否が応でも顔合わせるんだもんね。会場に行く前にここには来るんでしょ?」

嘆息してソファーの背もたれに寄りかかった私に、さやかはにっこりと微笑んで頷いた。

「もちろんです。明日は真奈美さまの大切な日なのですから、颯さまがエスコートされますよ」

その答えを聞き、私は少しだけホッとする。

明日は結城本家で小規模ながらも会食がある。なんでもコンツェルンの専務でグローバル事業を担っている颯の叔父が、半年ぶりに日本へ帰国するのだとか。

彼を慰労するのと、改めて颯の婚約者となった私を紹介するのが、今回の会食の目的だ。

身内ばかりの小規模な催しとはいえ、いよいよ颯の妻として私の夫人業が始まる。コンツェルンの次期会長夫人としての役割は跡継ぎを産むことと、社交界で夫に恥を掻かせないこと。美しく、かつ貞淑に振る舞い、社交界での華となるのが夫人の責務だ。

もちろんそのための準備は幼少の頃から叩き込まれているのでぬかりはないけれど、いよいよ本格的に始まるのだと思うと緊張しないでもない。

そんな訳で、出来ることなら会食の前に颯と仲直りをして、ちょっとは晴れやかな気持ちで臨みたいとひそかに願う私だった。
 
 
< 49 / 155 >

この作品をシェア

pagetop