旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「え、いや、あの、えーと…………わ、私こそこないだはごめん。すごく反省した。あと…………ドレス、ありがとう。嬉しかった」
颯が素直に謝ってくれたおかげで、私も素直な気持ちがなんとか紡げた。ホッとすると同時にものすごく恥ずかしくもなってくる。
思わず俯いてしまうと、妙な沈黙が流れた後
「……似合ってる。その色で正解だったな」
ひとり言のようにボソリとそんな呟きが聞こえた。
まさか素直に謝罪するだけでなくそんな褒め言葉まで掛けられると思っていなかった私は、馬鹿みたいに顔を真っ赤に染め上げてしまう。
だって――颯は婚約者の義務感からドレスを贈っただけかも知れない。そんな卑屈で、でも冷静な考えが私の頭には少なからずあったんだもの。
けれど、ちゃんと颯が見立てて選んでくれたんだと伝わる呟きが、私の胸を嬉しさと感激でいっぱいにした。
「もう支度済んでるのか? なら行くぞ」
颯はそう言うとソファに座ってる私に向かって手を差し伸べてきた。
ドレスアップしている女性を立ち上がらせるのに男性が手を貸すのは紳士として当然のエスコートだけど、今日の私にはそんな颯の姿が王子さまに見えてしまう。
――やっぱり私……颯に惚れてるんだなあ。
そんなことを改めて実感してしまい胸をときめかせながら、私は彼に相応しい淑女らしい所作で手を取りソファから立ち上がった。