旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
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結城本家の本邸は、日本で一番地価が高いとされる東京都千代田区にある。その敷地面積はざっと一万五千平方メートル。いわゆる一般的な住宅の百倍の広さは優に超えるけど、普段ここに住んでいるのは現結城総会長夫婦、つまり颯のお父さまとお母さまだけなのだからとんでもない贅沢だ。
要塞みたいな高くて頑丈な外壁で覆われた敷地内へ入っても、車をしばらく走らせなければ玄関までは着かない。
うちもそれなりのお金持ちだったけれどやっぱり日本一の財閥は桁が違うなと、正門をくぐってから十分は玄関に向かって走り続けている車内でつくづくと感じた。
そうして玄関前まで着いて颯にエスコートされながら車を降りれば、目の前にある建物は目を疑うような“城”だ。誇張表現ではない。本当に颯の実家は“城”なのだ。
颯の説明によると彼の三代前のお爺さんがドイツのホーエンシュウバンガウ城を真似て作らせたとか何とか。以来、時代に合わせリフォームを重ねつつも今尚見事な荘厳さを湛えた外装を保っている。
そんな現実感のない“実家”の前に立つ颯を見て私は、颯って本当にお城の王子さまなんだなあと妙な感心を改めてしてしまった。
邸内に入れば入ったで豪華絢爛なのは言うまでもない。さすがに普段使いの住宅としての手入れを考えると、内装まで洋城とそっくり同じとはいかないけれど、それでも相当なものだ。
高ーいドーム型の天井、円柱と一体になった真っ白い壁には繊細な彫刻が施され、玄関ポーチの正面にはフレスコ画を飾った大階段が迎えている。
バロック建築を感じさせる屋敷内を颯にエスコートされながら歩いていると、なんだか自分が中世のお姫様に思えてきた。21世紀の現代日本でプリンセス体験が出来るとは、さすがの私も驚きである。