【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
菫とままごとをしている五郎ちゃんを
私と三浦さんと桐生さんは笑いを堪えながら見ていた。
大きな手に見えなくなっちゃうぐらいの小さな食器を持って食べる真似をしたり
寝なさいと言われれば横になって菫にトントンとされている。
「私でも五郎ちゃんにあんな事させられないわ」
「見ちゃいけないもん見てるようでドキドキしやす」
「この部屋を出たら記憶抹消よ」
それでも部屋を出て襖を閉めると私達は大笑いをしてしまう。
「平良さん子どもスキなんでごぜぇやすね」
「そうね。でも桐生さんがままごとしてるのも知ってるわよ」
「いや、結衣さんその記憶も抹消しておくんなせぇ」
藤堂家に笑いを運ぶ五郎ちゃんだったように思う。
無事に退院後検診が終わり五郎ちゃんが福岡へ帰る日がやってきた。
一緒に生活していたので余計に淋しい。
菫も大泣きをしている。
「福岡にも遊びに来たらよかばい」
「うん。五郎ちゃんまた来てね」
菫は五郎ちゃんの足にしがみつくようにしながらお別れを言っていて、
最後にまた大きな五郎ちゃんに抱き上げてもらうとすごく満足そうな顔をしていた。
「五郎ちゃん」
「なんや四郎、おかんは泣いたらいけんとね」
私の頭をガシガシッと撫でてから飛行機の搭乗口へ向かった。
五郎ちゃんの首にはしっかりと巻かれた赤いマフラー。
私と三浦さんの首にももちろん巻かれている。
そのマフラーに自然と手がいき触れた瞬間に思いついた。
私は慌てて駆け寄ると
「すみません。この人、肺の手術をしたんです。お医者さんはもう大丈夫って言ったんですけど気を付けてみていただけますか。痛くてもやせ我慢する人なのでお願いします」
「四郎、子どもじゃなかとよ」
「子どもの方がちゃんと言うもの」
航空会社の方も客室乗務員に伝えますと言ってくれて
五郎ちゃんは「ばり恥ずかしい」と言いながら飛行機に乗って行った。
大きな身体に赤いマフラーの後ろ姿が見えなくなるまで私達は見送った。
無事に福岡に着いたと連絡が来て
やっと安堵の息がつけた。
そして今回の騒動はやっと幕を降ろしたという感じだ。