【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち



「菫ちゃんあっしとはいつでも繋げるんで龍崎の若とお繋ぎくだせえ」


慌てているのは当然ながら桐生さんだけれど


「おい桐生、憐れみに聞こえてムカつくな」


「いや、司は憐れだから」


私と明日実さんは可笑しくて堪らない。



それでも桐生さんを救うために


「菫、司が泣いちゃうかもよ」



その言葉でハッとしたように桐生さんから手を離し司の手をしっかりと握った。


「同情だから」


ボソッと囁いた私の言葉も聞こえないふりをしていた。



由香里さんに挨拶してくるというので私達は由香里さんの部屋へ向かった。



「小さい頃は新年の挨拶に伺ってたけど本当に広い屋敷よね。迷子になりそう」


明日実さんもこんなに奥までは来た事がないだろう。


「しょっちゅう迷子になってたわ」


「そうよね。1人じゃ無理だわ」


大人二人の会話に下の方から



「迷わないよ」


「生まれ育った子は違うのよ。どこでもスイスイなんだから」


明日実さんが驚く気持ちが私には理解できる。


廊下で誰かいませんかと叫んでいた頃の話をすると司は思い出したように笑うけれど明日実さんもまた私のその状況を理解してくれていた。





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