【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
和室をソーッと覗くと植木さんの前で正座をする菫の姿。
菫の腕を綺麗にふき取りながら植木さんが菫に話しかけていて菫もじっと植木さんの顔を見ては頷いている。
「刺青は一生消えねぇんだとか話してるのかな」
「背負っていく覚悟があるのかとかね」
「侍になりたいって子はやる事が違うよ」
「何だよそれ」
「菫は大きくなったら侍になりたいらしい」
こっそり覗くはずが襖の前で大人4人がクスクスと笑い声をあげてしまった。
「叱られたい人がそこにもおいでですかい」
低い植木さんの声に私達の笑い声は一瞬で止まった。
そしてその後「結衣さん」
植木さんが私の名前を呼んだ。
返事をして襖をあけて中へ入ると菫の横に正座をして座り
「桐生さんから詳細は伺いました」
「菫ちゃん、お母さんにここで一緒に聞いてもらうかい?それとも植木と2人で話す方がいいかい」
菫の顔を見るとグッと泣くのを我慢しているようだがそれでも
「うーさんと2人」
「お母さんには聞かれたくないんだね」
「うん」
植木さんが私の顔を見て頷くので黙って菫の頭を撫で
「お任せしますのでよろしくお願いします」
手をついてお辞儀をしてから和室を出た。